窓から差し込む光はぬくもりとなって華道部の部室を暖めている。
 あたたかなそれのせいか、私の横にいるシリアはうつらうらと大きな瞳を瞼でかくしたりそうでなくしたり、を何度か繰り返していた。
「眠いのですか」
「んー…ちょっとだけ、ね」
 シリアはそう告げるとくあ、とあくびをかみ締めた。
 そうだ、今気がついた。
 彼女の漆黒の髪は、きらきらと輝く日光にあてられ更に艶やかさを現している。
 私はその漆黒を梳きはじめると、シリアはまたあくびを噛み殺す。
 髪はさらさらとしており、指と指の間をすぐにすり抜けてしまう。
 まるで、すぐにどこかへ行ってしまうこの彼女のように。
 一指し指に黒髪を巻きつけては、放す。
 しゅる、と音をたてて再度逃げていく髪を見つめていると、シリアは大きな瞳を閉じながら、こう呟いた。
「私、ソロンにこうされるの好きだよ」
「そうですか」
「うんー…」
 まるで猫のようだ。今にもごろごろと喉を鳴らすのが聞こえてきそうなほどに。
 しかしその例えでは、いつか彼女が逃げてしまうような気がする。
 猫は、気まぐれなのだ。


誰かに連れ去られたりせぬように、



自ら私の元を放れたりせぬように、



漆黒の髪を鎖としてつなぎとめておかな



くてはならない。






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