昼食の時間、教室はわいわいと賑わっている。
 ある者は仲のいい者と席をくっつけ、またある者は学園に用意されている食堂へと移動する。
 そんな中、セネルは今まで気になっていたことをぽつりと彼女に告げた。


「リン、お前って何時もパンだよな。足りるのか?」


 濁りのない紫の瞳がつい、とセネルを射抜く。
 驚いた訳ではないだろうが、食べかけのパンを片手に持っていたリンは一度視線をパンに戻すと、無言でパンを口に入れるという作業を始めた。
 足りるのか、質問の意が少し違うかもしれない。
 セネルは内心苦虫を噛み潰したような感じだった。
 一時の沈黙が流れる。
 一応、リンは答えたら淡々とだが返してはくれる。昼食中の間には返事は返ってくるだろうと辛抱強く待つことにした。
 しかし、その沈黙はすぐに破られる。
 リンと共に昼食をしていたシリアがからからと笑っているせいだ。


「リンはね、お弁当作ろうとしていつも失敗してるからなんだよ」
「……」


 シリアは自ら作ってきたものであろう弁当の玉子焼きを箸で綺麗につかむと、ずいっとリンの顔に近づけた。
 そして彼女ははセネルともリンとも生まれた所ということが滲み出ているが違う顔つきの、可愛らしい笑顔であーん、と呟いた。
 その行動にセネルは目を見張る。
 まさかあのリンが口を開くわけないだろう、あるわけない。
 そう思いたかった。
 しかし、リンはゆっくりと口を開くと玉子焼きを頬張った。


「ね?パン一個で足りるわけないでしょ」


 そう言うとシリアは再度からからと笑い、美味しい?とリンへと言葉を投げかけた。
 リンはしばらく無言で口を動かしていたかと思うと、ようやく玉子焼きを飲み込み、口を開く。


「うん…シリアの作るたまごやき、甘くて、おいしいよ…」


 今まで聞いたことのない、うっとりとした声だった。
 セネルは愕然としてくうっと唇をかみ締める。


「リン!」
「な、に…?」





お前の弁当、これからが作る!」




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