って、動物好きだったの?」
「うん…」


 はその生き物を抱きしめていた腕を解くと、それは照れたような仕草をした。可愛らしい動きのその生き物は、誰が見ても癒される。


「お名前は、なんて言うの…?」
「モフモフ族のポッポだキュ!」


 ポッポは胸を叩くような仕草をした後、川の方を指差し、工房はあっちだキュ、と言った。セネル達は工房?と首を傾げたが、ポッポが先に行って待っているというので、セネル達もそれを追い、工房の中へと入る。するとそこには工房の中を半分以上占領している潜水艇のようなものがあった。


「何じゃい、このデカブツは」
「ポッポ三世号だキュ!水の中ならお任せだキュ!」
「み、水の中あ!?」
「ポッポって…凄いんだね…すごい…」


 クロエの悲鳴のような言葉に、皆の視線が突き刺さる。はそんなクロエに目もくれず、クロエは顔を赤くし咳き込むように誤魔化したが、ポッポは気にせず話を進めた。


「有人実験を申し出てくれるなんて、嬉しいキュ。キュキュキュ!」
「話が食い違っているようだな。俺たちがここにきたのは、「雪花の遺跡」に潜入するためだぞ」
「だから、ポッポ三世号に乗るんだキュ?」


 ポッポの言葉に、全員が首を傾げる。次に彼から発された言葉は、全員を驚愕させる言葉だった。ポッポいわく、遺跡の入り口があるのは、地底湖の中らしい。


「な、何だって!?」
「クロエ…そんなに慌てて、どうしちゃったの…?」
「いっいやっ、何でもない!」


 ウィルがそこ言葉の意味に唸った。ジェイの口車に上手く乗せられてしまったようだ。ノーマは失敗したらやり直しが聞かないと唇に人差し指を当て独り言のように呟く。するとモーゼスが船へと近づき、それをがつんと2、3度拳で叩いた。


「途中で壊れたりせんじゃろうの?」
「耐久性はポッポ二世号と同等だキュ。大シャコ貝に入った気でいるキュ」
「ポッポ…!貴方って本当にすご、」
「二世号沈んだじゃん!」


 がポッポへと賛辞の言葉をかけようとした所、ノーマのつっこみにより遮られる。はそれが不快だったのか、ノーマを一瞬睨めつけたが、それさえもウィルの言葉に遮られそうになった。


「成功確率は?」
「ずばり、一割だキュ!」
「低いっ!」


 ノーマを睨めつけていたがその言葉を聴きポッポへと驚愕の視線を送る。するとセネルが成功率を上げる方法がないかと尋ねた。ポッポは多少考える仕草をした後、問題の部分を説明し始めた。問題は障害物や壁に当たった時の衝撃吸収力らしい。そして、それを解決する為には、グランゲートの角を使用し排障器を作る必要があるのだと。


「ここは、雄々しきものの墓場なんだキュ。雄々しきものが死にそうになると、必ずやってくる場所なんだキュ」
「なるほど、モフモフ族の間では、グランゲートを雄々しきものと呼ぶのか」
「ポッポは物知りなんだね…!すごい…!」
「ちょっと、さっきからアンタ、少し変だよ。酔っ払ってるんじゃないの〜?よれよれラリラリしてるし」
「ち…違うもん…ポッポが、可愛いから…」
「そんな事言われると照れるキュ〜!っと、そうじゃないキュ。
 皆さん、雄々しきものの骨の中に、ちょうどいい大きさの角が無いか、探してきてくれないキュ?角は王冠の様な形をしているからすぐ解るキュ」
「わかった。引き受けよう」
「ウィルっち、張り切ってんね〜」


 ポッポの言葉に頷くと、次にポッポは忠告のようにもし、生きている雄々しきものがいたら、刺激しちゃいけない、死を迎えようとしている偉大な魂に、敬意を払ってほしい、と告げた。はそれに力強く頷くと、工房から出ようと歩き始める。しかしそこで、セネルに呼び止められた。


、お前は此処で待ってろよ」
「!何で……」
「ずっと歩き通しで疲れてるだろ。それに、万が一の事があるかもしれない。安全な場所で休んでるのが一番いい」
「そ、それじゃあ、私がここに居る意味が…!」
「”今は”って事だ。皆、行こう」


 セネルは小さくに笑いかけると、その場を後にした。はその場に残されると、モーゼスが出際に大人しく待ってるんじゃぞ、とにかっと歯を出して笑った。しかしはそれが気に食わないというように工房の隅っこに座り込み、素直に大人しく待つようにした。一応、ポッポの邪魔もしないように。するとはとある事を思い出し、ポッポへと尋ねた。


「ポッポ」
「何だキュ?さん」
「ポッポは…武器とか、作れる…?」
「得意中の得意だキュ!」


 どん、と胸を張る姿に、一瞬口ごもる。どうすればいいだろう、ポッポも忙しいだろうし、今この場で頼んでも大丈夫なのだろうか。は視線を泳がせていると、ポッポがへと近づいてきた。


さんは、武器を必要としているキュ?」
「あ…うん…」
「だったらこのポッポに任せるキュ!セネルさん達が戻ってくるまでに作りあげるキュ!」
「で、でも、いいの…?ポッポだって、忙しいんじゃ、」


 そんなことない、とポッポは言うように首を横に振った。するとポッポは工房内のガラクタを漁り始めた。それをぼんやりと眺めていると、強烈な眠気がを襲う。必要以上に此処は暖かくて、人の居やすい環境だからこそだろう。ここには囚われて居た時のように苦痛を受けることもない。はそれを感じ取ると、素直に瞼を下ろした。









―………

 誰だろう、私の名前を呼ぶのは。瞳をうっすらと開くと、寝ぼけ眼なせいか、その人物が誰だかわからない。けれど、色で判別するのなら、その人物は私と似た黄色のような、金色のような、髪をもった人だという事だ。そしてその背景には真っ白な世界。夢だろうか、ああ、夢だ。暖かいから。


―………だいじょうぶ………オレ…おこっ…ない……るし、なんて…


 話している事は聞き取れるのに、寝ぼけているから、それを理解しにくい。その人物は大きな手を私の頬のあたりをふわりと撫で、くすりと笑った気配がすると、その人物の気配は消えてしまった。撫でられた私の頬だけが、その人の手の温もりを宿して。もう一度瞳を閉じて夢を見ない仮眠状態に戻るとすれば、次に瞳を開いた時には本当の意味で目が覚める。夢の中でこんなにも夢だと自覚して踊らされる事なんて、今まであまりなかった。私はゆっくりと瞼を下ろすと、再び暗闇の中に引き戻された。