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久々に浴びた太陽の光は眩しくて、室内のこもりきりの肌に突き刺さるようだった。護送車のようなものに乗せられ、周りには兵がぞろぞろと歩いている。今回は酸素マスクは外されているが、輸血用の点滴もされたままだ。そしてさらに今日は首元にワイヤーとタグがかかっており、「混血種01」と書かれたものがある。拘束具はされているし、そのせいも含めどうしても起きる気にはなれなかった。護送車の積荷部分で横たわっている時にふと、違和感を感じた。は護送車の背にもたれていたが、それを起こし辺りを確認する。そこに映ったのは、山賊達に撃たれ、倒れている兵達。何が起きたのかわからない。 「敵襲だと!?どこの手の者だ!」 「ウォオオオッ」 メラニィのヒステリックな叫びは山賊の雄叫びにかき消された。その瞬間、辺りが白い煙に包まれ、は咽こむ。酸素マスクを外して弱っている体にはこれさえ辛い。ぜえはあと荒い呼吸を繰り返していると、銀色の髪の少年と、青いマントを着用した娘。そしてスティングルが映った。スティングルの方は珍しく剣を構えており、はああ、この人間達がこの騒動を起こしたのだと何となく察した。 「シャーリィ!」 「お兄ちゃん!」 そこで映ったのは、金色の髪を揺らした少女2人。きっと、昨日まで会話をしていた少女達だろう。すると、少女と少年らは兵から逃れるように水道内部に入っていった。それさえも、咳とその際に滲む涙が邪魔をして霞ませた。しばらく咽こんでいると、の護送車の周りに居た兵が、洞窟らしきものの中に入っていくのが見えた。その際にメラニィのつんざくような叫び声が響き渡っていた。しっかりと確認することはできなかったが、金色の髪があれの中に吸い込まれていくのが見えた。(きっと、あれがシャーリィとフェニモール) 「娘が逃げたぞ!追えぇっ!」 も2人に便乗して逃げ出したかったが、逃げ出した所で捕まるのがオチだろうと再度からだの力を抜いた。しかし、その瞬間ぐっと何かに引っ張られるのが解った。驚いて顔を上げると、仮面が映った。スティングルがの腕を掴んでいたのだ。は、常に下劣な事を考えているカッシェルより、何を考えているのか解らないこの男のほうが苦手だった。 「っ……な、に」 「メラニィがお前は連れてくるようにと言っていた。大人しく従うといい。」 は生理的にぶるぶると震える身体を落ち着かせ、大人しく護送車から降りた。その際に、スティングルが拘束具と輸血用の点滴を外してくれた。その後よたよたと安定しない体で水道内に連れて行かれた。スティングルを先導をついてくれた為魔物に襲われる事は無かったが、食事もろくに取っていないにとっては歩くだけでも一苦労で、すぐに息が上がってしまう。 「大丈夫か」 そういえば最近、水分を取っていない感じがする。(感じがする、であって実際はある程度与えられていたはずだ)口の中がからからになっていて、は舌を懸命に動かして唾液を集め、それを飲み込む動作を何度かした。こうでもしなければ死んでしまう。先ほどかけられたスティングルの言葉で、さらに彼が何を考えているのか解らなくなった。大事なサンプルの為なのか、もっと別の事を考えているのか。けれど今だけ、今だけはいい方へ、いい方へと考えたかった。は肩で息をしつつも、こくりと頷く。スティングルはそれを読み取ったのか、無言で先へと進む。しばらく歩いていくと、メラニィが遅いとと睨めつけた。この女は嫌いだ。はメラニィを睨み返しながら荒くなった息を整える為にその場にある酸素をとりこもうと深呼吸したが、その前にメラニィに殴り飛ばされた。 「生意気な目をするんじゃないよ! あのまま護送車に乗せたままにしておいたら、あのバカ娘達のように逃げるのがお決まりなようなもんだからね。連れ出して正解だったよ」 楽しそうな狂喜の声。は殴り飛ばされた際に口の中を切ったのか、じわりと鉄の味が口に広がった。むくりと起き上がると、メラニィはふん、と鼻でをあしらい、先へ進む。兵達も哀れみの目すら向けない。この冷たい状況が、何より恐ろしかった。その瞬間、喜びとも悲しみともうつかない少女の声が響いた。 |