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「ほ、ほんとに着いちゃったよ〜…」 「まあ、仮にもここに来たワルター達は戻ってきたのだし、妙な噂は気にしなくてもいいのでは?」 ウィルの言葉に、ノーマの表情がパッと輝く。それもそうだ。しかし、あの事は気にしなくていいのだろうか?がおもむろにノーマの肩を叩いて告げた。 「ねえ、重症で帰ってきた、ワルターの連れの人の事は……」 「あ゛。」 「なあ〜に!心配すんな!もし何かあっても、ワイとギートで守っちゃる!」 モーゼスの言葉と共に、ギートが遠吠えをする。その様子が何だかおかしくて、がくすりと小さく笑った。するとモーゼスがそれを見てお、と呟いた。 「譲ちゃんも笑うんじゃのお。」 「え」 「笑った方がエエ!ほれ、にかーっと!」 にかっと歯を出して笑うモーゼスに、は耳に髪をかけて照れた。それをセネルがよく思わなかったのか、早く行くぞ、と皆を急かす。そのセネルの様子を見てノーマがくつくつと喉で笑いながらセネルに尋ねる。 「セネセネ〜、もしあたしか、どっちかが怪物に食べられそうになったら、どっち助ける?」 「……」 そんな事を言われても。セネルがうっと唸ったが、心の中ではそんなの簡単な問題で、答えなど当に出ていた。を助けるに決まってる。彼女はそれなりに戦えるし、それなりに強いけれど、どこかふらふらと行ってしまいそうで、守ってやりたいと思うのだ。 「の方に決まってるだろ」 「あ〜!あたしは!?あたしはどうなっちゃうワケえ〜!?」 そう言いつつも、ノーマの表情はどこか楽しそうで、セネルはさっさと行くぞ、と建物の中へと入っていった。セネルについて中へ進むと、珊瑚色の廊下のような回廊の周りには霧のようなものが立ち込めていて、寒いとまでは行かないが、肌寒さを感じた。 「な〜んか…予想通りブキミなところだね」 「…そうだね」 奥へ奥へと進んでゆくと、大きな広間のような場所に出た。その部屋の隅にはどこか違和感のある石造の数々に、中央には目玉の模様が描かれた不気味なベッドが横たわっていた。ノーマがそれを見て飛びつく。 「わ〜っ!寝心地よさそう!」 「ノーマ、無用心な行動は慎め!」 「あ、あぶないよ…!…何か、へん」 中央のあり得ないベッドに埋もれたノーマを、セネルが引っ張り出す。怪しいどころか、明らかにモンスターのそれは、滑稽でもある。セネル達が戦闘態勢を作れば、向こうからメドゥーサの様なモンスターが近づいてきた。このミミックベッドと合わせれば、2体。苦戦するだろうかとは眉を潜めたが、そんな事を考える前に2体が襲い掛かってきた為、素直に武器を構えざるを得なかった。 「わわっ!こいつぅ、石化ビームみたいなのつかってくるよっ!」 「このベッドも、大きくて邪魔だっ…!」 ノーマとクロエがぶちぶちと愚痴吐いていると、早速モーゼスが石化してしまい、ウィルが溜息を吐きながらリカバーを掛けた。あまり前に出すぎるな、というお決まりの台詞付きで。 「…っ、邪魔なんだよ…!蛇は嫌いっ!」 が口悪く嫌いだ、と呟いた後、薙刀を振り下ろせばディーバはスカルプチャになって消えた。残りのミミックヘッドも間も無くクロエの虎牙破斬によって倒される。がはあ、と溜息を吐くと、クロエがの肩に手を置いて平気か、と声を掛けてきた。 「…うん、大丈夫。」 「にしても、この石像ってさあ…」 「もしかしなくとも、先程のディーバにやられたものだろうな」 「さすが、人食い遺跡!なんてコーカツな!」 ノーマが青ざめた顔で石像を見やる。この石像が元は人間だと思うとシュールな話すぎて頭が痛い。するとセネルが先程のノーマの言葉を聞いてじとりと彼女のを睨みながらあのトラップに引っかかるほうがどうかしてる、と告げた。セネル達が石像のある部屋にあった階段を上ると、そこには筒のようなものの中に人形らしきものが入った部屋に出た。 「この部屋、何かカカシみたいのがいっぱいあるね」 「副葬品の一種だろう。いかにも墳墓という感じだな」 「ふくそう、ひん…?」 「死者を埋葬する時に遺体に添えて収める物だ。」 の浅学な言葉にウィルが溜息を吐きながら説明してやる。その言葉にはああ、と頷いた。 「お母さんが死んだとき…それに近いもの、棺桶に入れてあげた」 「……そうか」 「うっ(い、嫌な空気〜!!)」 ウィルが遠い目をしていると、クロエがその嫌な雰囲気を取り払うように、辺りを見回しながら告げる。だいぶ奥まで来たが、目的のささやきの水晶とやらは何処にあるのだろうか。するとセネルが奥の祭壇のようなものを指差してあれじゃないか、と声を上げた。 「見た目は思いっきり水晶だね。あれでいいのかな?」 「いいんじゃない…?だって、”水晶”だもん…」 青く透明なそれは、僅かに赤く光を灯していて、とても綺麗だ。それを見たモーゼスが、お宝お宝、と騒ぎながら水晶に近づいたが、目の前にして足をぴたりと止めた。 「へへ、一番乗りじゃ…おおっ!?」 「…どうしたの、モーゼス…?」 「こ、これは…!」 モーゼスの声に緊張感が漲り、セネルが非常事態だと察したのかすぐに掛けよる。モーゼスは棺桶の中見てみい、とセネルやウィルに告げる。何があるのだろうか。そーっと覗いてみると、そこには… 「これは…」 「…!」 「……天使さまだ…」 「、天使様はありえないっしょ」 そこには美しい女性が眠っていた。思わず皆が誰なんだ、と叫ぶ。すると眠っていた女性がむくりと起き上がり目を擦っていた。最高級の笑顔もつけて。 「みんな、おはよう」 「お、おはよう、ございます」 「…おはよう、天使さま」 ウィルがおずおずと名前は?と聞けば、彼女はんー、と顎に人差し指を当てて考えた後、グリューネだったと思うと言った。かなりマイペースな女性だ。こちらもペースが崩される。 「どーしてこんなとこにいんの?」 「うららかな陽気に誘われて、つい…」 「天使さま…魔物に襲われたりしなかったの…?」 「皆さん、とても親切にしてくれたわぁ」 うぅ、とクロエやウィルが頭を抱える中、セネルが頭をぶんぶんと横に振って本来の目的に戻ろうと水晶へを見やる。それを確認するかのようにウィルも水晶を取りに来たのだったな、と呟いた。その言葉に、セネルが半場興奮したようにそう、それだ!とウィルを指差す。 「部屋を一通り探してみたが、アレ以外にささやきの水晶と思われるものは無かったな。 ちと大きいが、持ち帰ることにしよう」 セネルがそれを聞いて例の水晶へと近づき、手を触れる。その瞬間、淡い光が水晶から漏れた気がしたが、他に異変も無い為、気にせずセネルは水晶を抱えてこちらへと持ってきた。 「グー姉さんは、どうすんの?」 「もちろん、一緒に行くわよぉ。ピクニックは大勢の方が楽しいものねぇ」 「ピクニックて」 「連れて行くことに不安がないでもないが、かといって置き去りにもできん。皆、了承してくれ」 ウィルの言葉に、皆が頷き、部屋を出る。部屋を出る時に、副葬品の人形がちかりと光ったように見えたが、の気のせいか、と思い無視して部屋を出た。人食い遺跡の出口まで戻ってきたところで、セネルが水晶を置いてモーゼスを見た。 「モーゼス、水晶を運ぶの、交代してくれ」 「オウ」 そう告げてセネルに近寄ろうとした時、赤い装いの兵達が寄ってきて剣を構えた。明らかにヴァーツラフ軍だ。このままじゃあまずい、セネル達が武器を構えると、遺跡の中からガシャガシャという機械音が耳に入った。そして次に現れたのは、遺跡の中で見かけた副葬品の人形。 「うっそ!カカシが動いてる!?」 「くそっ、挟み撃ちかよ!」 けれどセネルの言葉も関係ないと言わんばかりに、人形はセネル達を無視し、ヴァーツラフ兵へと攻撃を下した。一体だけでもなかなか強いようで、兵達はあっという間に倒れてしまった。 「俺達を守ってくれたのか?」 「…何だろうね、この人形…?」 「マウリッツさんに聞けば、何かわかるかもしれん。一緒に持ち帰る事にしよう。 グリューネさん、一人で街まで帰れるか?」 「あらぁ?どうして街まで帰るのかしら?」 セネル達はあせった様に仲間達で円を囲みひそひそと話し始めた。その様子ですら、グリューネはにこにこと眺めているだけ。 「名前以外、ど〜も要領得ないよね」 「もしかして、記憶喪失なのでは?」 「あら、記憶はちゃんとあるわよ」 聞こえていたのか、びくっとグリューネの方へ振り返れば、彼女はまたもにこにこと笑ったまま、頬に手を当てて告げる。ノーマがどんな記憶?と聞けば、グリューネは目を細めてた。 「お昼寝からさめたら、皆がいたわ」 「ついさっきじゃん!」 「クロエの言うとおり、本当に記憶喪失かもしれないな。ひとまず一緒に連れて行こう」 ウィルの言葉にグリューネは目を輝かせて両手を握り、こう言った。カカシと同じ扱いなのが、とってもうれしい、と。でも判る。始めは天使様だと思うくらいの女性だったが、この人はただの変な人だ。 |